2020 / 08 / 21

記憶の標本
episode no.004
高校生の時デートでお台場に行ったことがある。
当時は千葉の市原市に住んでいて、
東京にデートに行くというのははじめてのことだった。
ゆりかもめの車窓からみた東京の夜景というものの
光の多さに驚いたことをたまに思い出す。
手前に奥に、上にも下にも、いくつものレイヤーが
重なっているみたいに光の粒が並んでいた。
自分の住む街に近づくにつれて光の数は徐々に減っていき、
一定間隔で灯る街灯と、低い位置で光る一軒家の光、
自動販売機が遠くで光るのをぼんやりみながら家路に着いた記憶がある。
大人になった今、実家から帰ってくるとき、
車でレインボーブリッジを渡って、東京タワーの脇を通り、
光の粒の合間をぬって走っていく車に運ばれながら、
自分は今、あの頃みた光の粒の中で暮らしていると思う。